9 光源氏の運命

 帝が溺愛した更衣とのあいだに、第二子として誕生したのが光源氏です。帝にはすでに弘徽殿の女御とのあいだに第一皇子がいます。順当に考えれば、この第一皇子が皇太子(東宮)の座に就くべきなのですが、あれほど寵愛された更衣の子だ …

8 最愛の人の死

 桐壷帝の正妻は弘徽殿女御で、帝の東宮時代からの妃にして、第一子(のちの朱雀帝)の母です。右大臣の娘なので押しが強い。桐壷更衣の父も大納言まで登った人ですから、身分が低いというわけではないのですが、故人ということもあり立 …

7 桐壺更衣の宿命

 さて、ここからは物語の内容を順に追っていきましょう。まず『桐壷』の冒頭で上達部や上人といった官位の高い人たちが騒いでいます。「唐土にも、かかる事の起こりにこそ、世も乱れあしかりけれ」。「かかる事の起こり」というのは、桐 …

6 『源氏物語』の物の怪

 もちろん『源氏物語』の時代といえども、やたら加持祈祷のようなことばかりやっていたわけではありません。律令制のもとでは、陰陽寮とか典薬寮といった機関が置かれていました。陰陽寮の技術官僚みたいな人たちは、陰陽道に基づく呪術 …

5「物の怪」ってなんだろう?

 『源氏物語』には物の怪がたくさん出てきます。「物の怪」というと、いまの若い人たちの多くは宮崎駿のアニメを思い浮かべるかもしれません。でもあの映画でモノノケの正体ははっきり明かされていませんよね。 古い時代に「モノ」は神 …

4 『源氏物語』の主題ってなんだろう?

 いくつもの主題が重層していて、いろんな読み方ができるというのも『源氏物語』の魅力ですね。たとえば政治小説的な読み方をすればどうでしょう?ご承知のとおり、物語の背景には藤原氏による階位の独占、いわゆる「摂関政治」がありま …

3 光源氏の結婚

 光源氏の奥さん、正妻は二人です。一人は葵の上、もう一人は女三の宮です。光源氏がいちばん心を通わせ、愛したはずの紫の上は正妻ではありません。世間的には側室、妾という立場でした。後ろ盾もなく、天涯孤独だった娘を、源氏が引き …

2 物語の概観と光源氏の生涯

まず物語の全体を概観しておきましょう。『源氏物語』は54巻(帖)よりなる主人公・光源氏を中心とした約70年の物語です。光源氏の一代記として読めば、第44巻の「雲隠れ」までは彼が生まれ、育ち、恋をし、流謫(須磨・明石に蟄居 …

1 はじめに

 今年はみなさんと一緒に『源氏物語』を読んでいこうと思います。といっても、特別な趣向があるわけではありません。ただ漫然と、といいますか、最初の巻(帖)から順番に読んでいくというだけの話です。そもそも、ぼく自身がこの作品に …