平安京は長安をモデルに設計された、当時の最先端都市です。「近代」都市と言ってもいいでしょう。ご承知のように条坊制によって合理的にデザインされています。その京の都はまた、さまざまな怪異に支配された街でもありました。 「 …
カテゴリーアーカイブ: 源氏物語
14 夕顔との出会い。
物語は進んで第四帖の「夕顔」です。光源氏は17歳の夏を迎えています。ある日、尼になっている病気の乳母を見舞ったおり、隣の家に咲いている白い花に目をとめます。護衛の随身に花の名をたずねると「夕顔」と答える。源氏は一房折っ …
13 空蝉、光源氏を振り切る
一夜の契りはあったものの、以後、空蝉は源氏の誘いに応じません。かつて帝から宮仕えを勧められたほどの女性です。それを自ら断ったという経緯がある。小柄で弱々しくも見える空蝉ですが芯は強いのでしょう。女としての矜持をもって生 …
12 光源氏、空蝉の寝所へ忍び込む
さて、いよいよ光源氏が女たちの休んでいる寝所へ忍び込んで、人妻である空蝉を盗み出すシーンです。この場面は面白いのでゆっくり読んでみましょう。 空蝉が「中将の君はどこにいるのかしら。人気がない気がして、なんだか怖いわ」と …
11 中の品の女をめぐって
『帚木』の後半は、源氏がふとしたことから「中流の女性」である空蝉を見出し、彼女と一夜の契りを結ぶ場面へと進みます。暇を持て余した男四人(源氏、頭中将、左馬頭、藤式部丞)が、宮中で女談義に夜を明かした翌日のことになります …
10 結婚してはみたけれど
小津安二郎の映画に『生まれてはみたけれど』や『大学は出たけれど』という「although」シリーズとでも言うべきものがあります。これに倣えば、光源氏の場合はさしずめ「結婚してはみたけれど」といったところでしょうか。 …
9 光源氏の運命
帝が溺愛した更衣とのあいだに、第二子として誕生したのが光源氏です。帝にはすでに弘徽殿の女御とのあいだに第一皇子がいます。順当に考えれば、この第一皇子が皇太子(東宮)の座に就くべきなのですが、あれほど寵愛された更衣の子だ …
8 最愛の人の死
桐壷帝の正妻は弘徽殿女御で、帝の東宮時代からの妃にして、第一子(のちの朱雀帝)の母です。右大臣の娘なので押しが強い。桐壷更衣の父も大納言まで登った人ですから、身分が低いというわけではないのですが、故人ということもあり立 …
7 桐壺更衣の宿命
さて、ここからは物語の内容を順に追っていきましょう。まず『桐壷』の冒頭で上達部や上人といった官位の高い人たちが騒いでいます。「唐土にも、かかる事の起こりにこそ、世も乱れあしかりけれ」。「かかる事の起こり」というのは、桐 …
6 『源氏物語』の物の怪
もちろん『源氏物語』の時代といえども、やたら加持祈祷のようなことばかりやっていたわけではありません。律令制のもとでは、陰陽寮とか典薬寮といった機関が置かれていました。陰陽寮の技術官僚みたいな人たちは、陰陽道に基づく呪術 …