身も蓋もない言い方をすれば、平安時代の文学の主題は四季(季節の移り変わり)と性愛、ほぼ二つに尽きています。こうした傾向は、最初の勅撰である『古今和歌集』にとくに著しいように思います。収録されている歌の半分は四季を、残り …
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18 光源氏、若紫を略奪する
「若紫」の軸になるのは、光源氏が若紫を見初めて略奪するまでの経緯です。そのあいだに藤壺との二度目の密会が置かれます。「紫のゆかり」であるこの二人が、光源氏にとってもっとも重要な女性であることは言うまでもありません。 病 …
17 藤壺、懐妊する
藤壺は懐妊します。帝の后を、その実子である光源氏が妊娠させてしまったのです! なるほど、戦前に『源氏物語』が不敬の書とされたはずですよね。 宮も、なほいと心うき身なりけり、と思し嘆くに、なやましさもまさりたまひて、と …
16 光源氏、若紫を見初める
帖は「若紫」に入ります。18歳の源氏は病気です。「瘧病(わらはやみ)」とあります。マラリアみたいなものだったようです。源氏は北山の寺にいる行者のところへ治療に通います。そこで幼女といっていい若紫(のちの紫の上)を見初め …
15 怪異に支配された街
平安京は長安をモデルに設計された、当時の最先端都市です。「近代」都市と言ってもいいでしょう。ご承知のように条坊制によって合理的にデザインされています。その京の都はまた、さまざまな怪異に支配された街でもありました。 「 …
11 中の品の女をめぐって
『帚木』の後半は、源氏がふとしたことから「中流の女性」である空蝉を見出し、彼女と一夜の契りを結ぶ場面へと進みます。暇を持て余した男四人(源氏、頭中将、左馬頭、藤式部丞)が、宮中で女談義に夜を明かした翌日のことになります …
10 結婚してはみたけれど
小津安二郎の映画に『生まれてはみたけれど』や『大学は出たけれど』という「although」シリーズとでも言うべきものがあります。これに倣えば、光源氏の場合はさしずめ「結婚してはみたけれど」といったところでしょうか。 …
9 光源氏の運命
帝が溺愛した更衣とのあいだに、第二子として誕生したのが光源氏です。帝にはすでに弘徽殿の女御とのあいだに第一皇子がいます。順当に考えれば、この第一皇子が皇太子(東宮)の座に就くべきなのですが、あれほど寵愛された更衣の子だ …
8 最愛の人の死
桐壷帝の正妻は弘徽殿女御で、帝の東宮時代からの妃にして、第一子(のちの朱雀帝)の母です。右大臣の娘なので押しが強い。桐壷更衣の父も大納言まで登った人ですから、身分が低いというわけではないのですが、故人ということもあり立 …
7 桐壺更衣の宿命
さて、ここからは物語の内容を順に追っていきましょう。まず『桐壷』の冒頭で上達部や上人といった官位の高い人たちが騒いでいます。「唐土にも、かかる事の起こりにこそ、世も乱れあしかりけれ」。「かかる事の起こり」というのは、桐 …