帖は「若紫」に入ります。18歳の源氏は病気です。「瘧病(わらはやみ)」とあります。マラリアみたいなものだったようです。源氏は北山の寺にいる行者のところへ治療に通います。そこで幼女といっていい若紫(のちの紫の上)を見初め …
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15 怪異に支配された街
平安京は長安をモデルに設計された、当時の最先端都市です。「近代」都市と言ってもいいでしょう。ご承知のように条坊制によって合理的にデザインされています。その京の都はまた、さまざまな怪異に支配された街でもありました。 「 …
13 空蝉、光源氏を振り切る
一夜の契りはあったものの、以後、空蝉は源氏の誘いに応じません。かつて帝から宮仕えを勧められたほどの女性です。それを自ら断ったという経緯がある。小柄で弱々しくも見える空蝉ですが芯は強いのでしょう。女としての矜持をもって生 …
11 中の品の女をめぐって
『帚木』の後半は、源氏がふとしたことから「中流の女性」である空蝉を見出し、彼女と一夜の契りを結ぶ場面へと進みます。暇を持て余した男四人(源氏、頭中将、左馬頭、藤式部丞)が、宮中で女談義に夜を明かした翌日のことになります …
10 結婚してはみたけれど
小津安二郎の映画に『生まれてはみたけれど』や『大学は出たけれど』という「although」シリーズとでも言うべきものがあります。これに倣えば、光源氏の場合はさしずめ「結婚してはみたけれど」といったところでしょうか。 …
9 光源氏の運命
帝が溺愛した更衣とのあいだに、第二子として誕生したのが光源氏です。帝にはすでに弘徽殿の女御とのあいだに第一皇子がいます。順当に考えれば、この第一皇子が皇太子(東宮)の座に就くべきなのですが、あれほど寵愛された更衣の子だ …