16 光源氏、若紫を見初める

 帖は「若紫」に入ります。18歳の源氏は病気です。「瘧病(わらはやみ)」とあります。マラリアみたいなものだったようです。源氏は北山の寺にいる行者のところへ治療に通います。そこで幼女といっていい若紫(のちの紫の上)を見初め …

15 怪異に支配された街

 平安京は長安をモデルに設計された、当時の最先端都市です。「近代」都市と言ってもいいでしょう。ご承知のように条坊制によって合理的にデザインされています。その京の都はまた、さまざまな怪異に支配された街でもありました。  「 …

11 中の品の女をめぐって

 『帚木』の後半は、源氏がふとしたことから「中流の女性」である空蝉を見出し、彼女と一夜の契りを結ぶ場面へと進みます。暇を持て余した男四人(源氏、頭中将、左馬頭、藤式部丞)が、宮中で女談義に夜を明かした翌日のことになります …

10 結婚してはみたけれど

 小津安二郎の映画に『生まれてはみたけれど』や『大学は出たけれど』という「although」シリーズとでも言うべきものがあります。これに倣えば、光源氏の場合はさしずめ「結婚してはみたけれど」といったところでしょうか。   …

9 光源氏の運命

 帝が溺愛した更衣とのあいだに、第二子として誕生したのが光源氏です。帝にはすでに弘徽殿の女御とのあいだに第一皇子がいます。順当に考えれば、この第一皇子が皇太子(東宮)の座に就くべきなのですが、あれほど寵愛された更衣の子だ …

8 最愛の人の死

 桐壷帝の正妻は弘徽殿女御で、帝の東宮時代からの妃にして、第一子(のちの朱雀帝)の母です。右大臣の娘なので押しが強い。桐壷更衣の父も大納言まで登った人ですから、身分が低いというわけではないのですが、故人ということもあり立 …

7 桐壺更衣の宿命

 さて、ここからは物語の内容を順に追っていきましょう。まず『桐壷』の冒頭で上達部や上人といった官位の高い人たちが騒いでいます。「唐土にも、かかる事の起こりにこそ、世も乱れあしかりけれ」。「かかる事の起こり」というのは、桐 …

6 『源氏物語』の物の怪

 もちろん『源氏物語』の時代といえども、やたら加持祈祷のようなことばかりやっていたわけではありません。律令制のもとでは、陰陽寮とか典薬寮といった機関が置かれていました。陰陽寮の技術官僚みたいな人たちは、陰陽道に基づく呪術 …

5「物の怪」ってなんだろう?

 『源氏物語』には物の怪がたくさん出てきます。「物の怪」というと、いまの若い人たちの多くは宮崎駿のアニメを思い浮かべるかもしれません。でもあの映画でモノノケの正体ははっきり明かされていませんよね。 古い時代に「モノ」は神 …

4 『源氏物語』の主題ってなんだろう?

 いくつもの主題が重層していて、いろんな読み方ができるというのも『源氏物語』の魅力ですね。たとえば政治小説的な読み方をすればどうでしょう?ご承知のとおり、物語の背景には藤原氏による階位の独占、いわゆる「摂関政治」がありま …